伝統工芸実演
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12月31日(火)~ 1月7日(火) 

『江戸文字』大石智博

江戸におきましては、提灯製造の分業化から、文字や家紋を描く職人のことを「描き屋」といい、一般に提灯屋というのは、提灯のみならず、看板やビラなどにも字を入れる描き屋のことでもあったそうです。
提灯に使われる書体の代表格は籠字(かごじ)と呼ばれる江戸文字の一つで、その名の由来は、文字が滲まないように最初輪郭線を描き込む素描き(土手描き)の線が、編んだ籠のように見えるからというのが有力ですが、線の端をちょっと尖らせ上に向け、運気が上向きになるよう、 神様仏様のご加護がありますようにと願うことからカゴの名がついたとの説もあります。
江戸文字には様々な形があり、その謂われも諸説色々ありますが、共通して出てくるキーワードは、「運気向上」「右肩上がり」「大入り」など縁起の良い言葉、験担ぎの願いが込められて、 単なるかたちや面白さだけではないということです。
どこの国でも物事を伝える道具としての字はありますが、人々がその権力に負けてたまるかという想い、反骨精神が形になった書体を持つのは日本、江戸文字だけではないかと思います。
それは当時の時代背景、仕事も金もない武士とのアンバランスな身分制度があったからこそ生まれた文化の一つかもしれません。 更に権力だけでなく、大地震や大火などの災害にも何度も潰されながら、それにも負けない復興の象徴でもあったと思われ、それは今の日本にも通じるのではないかと思います。